Sayaca 

Quedémonos Aquí (いつまでもここに)

 詩:Homero Exposito (オメロ・エクスポシト)

 

 

ねえあなた 人生とは過ぎ去っていくものよ

ここにいましょう もうその時がやってきたのよ

私の愛する人 ここにいましょう 

どうしてさまようことがあるの 

なんの慰めもないのに

 

ねえあなた 私達の花がまた咲いたわ

だけどまだ孤独の匂いがする

ここにいましょう

私達の倦怠は 終わりのない詩のようなもの

それをここで終わらせましょう

 

ずっと閉ざしてきたあなたの心をわたしに開けて

見て あの川の美しさを

夜が明けたら あなたに夜露の花束をつくってあげるわ

・・・夜の闇、忘れたいこと、そんなものはもうたくさん

望みのない酒ももうこりごり

あなたの過去を

何にも信じることのできなかった昨日までの日々に

すべて葬ってしまいましょう

 

おそらくあまりにも心を閉ざしてきたせいでしょう

あなたは太陽に目が眩んでいるけれど

それももうお終い

これからはすべてが輝かしい色に満ち溢れるのよ

愛するあなた ここにいましょう

花のそばにきて

そうしたら あなたが本当に求めている

心というものがわかるわ

いつも何かに怯える過去の気持ちは

いっさい泥沼に捨てて

これから二人で 新しい人生に踏み出しましょう

 

 

 

 

Recíen (今、やっと)

 詩:Homero Manzi(オメロ・マンシ)

 

 

今 やっと

君のもとへと帰ってきた

数々の失敗と傷を隠しながら

君のやさしく清らかな手に包まれて

今初めて気がついたんだ

昔、僕が君を傷つけていたことに

 

あの頃はまだ若く 無謀だった

不器用で うそをついてばかりいて

そんな僕を君はとても愛してくれたのに

僕はと言えば 君の涙と悲しむ姿に 

嫌気がさして 出て行ってしまったんだ

 

今 やっと

物事を素直に見ることができるようになった

人生からいかに沢山のことが学べるかということも知ったんだ

今 こうして君のもとに戻ってきて

昔のことを責められると思っていたのに

それどころか 君は全てを許してくれた

 

 

 

 

Silueta porteña (ブエノス・アイレスの影法師 (シルエット))

 詩: Orlan Daniel y Ernesto Noli(オルラン・ダニエル エルネスト・ノリ)

 

 

 歩道に靴音響かせて 君が街を歩く時

街をぶらつく 遊びの好きな あのミロンガのリズムを刻む

美しく流れるようなあのリズム

君は行ったり来たりして まるで踊っているみたい

だから皆に見て欲しい 皆に君を見て欲しい

何故なら君の身体には ブエノス・アイレスの娘たちの 

誇りと見事な身のこなしがあるからだ

 

それは地元の昼下がり 

雲を織り込んだ 美しい空

君の髪には 国旗の色のヘアバンド

それは全く君の誇り

そして君の両の瞳(め)が

どんなに輝いていることか

 

男たちは君を冷やかし 声を掛ける

君が通ると花を投げる 

拾って 髪に挿して欲しいと

君の髪を飾るそのヘアバンドと一緒に

君の身体は告げている 君の誇りとそのリズム

歩道に響く靴音も告げている 

“私は地元の心の影法師(シルエット)”

すると皆は君のことを 一番きれいで 

一番ブエノス・アイレスの土地っ子らしいと持て囃す

 

 

邦訳:大澤 寛

 

 

 

 

 

Soledad(孤独)

 詩:Alfredo Le Pera(アルフレド・レ・ペラ)

 

 

誰にも言われたくないの

二人の甘い生活が もう過去のものだということを

来るはずのないあなたからの電話を待って

私の心は嘘でもいいからと、あなたを待っている

誰にも知られたくないの

私の孤独がどんなに辛く深いものであるかを

夜毎(よごと)、悪夢のように

時間がゆっくりと重たい時を刻んでいく

 

私は病んだ暗い部屋の中で

帰るはずのないあなたの足音を聞いている

時折その足音は止まり

部屋へ入ってくるのを躊躇しているように思えるの

でも そこには誰もいなくて

彼はもう戻ってこない

それは私の抱く幻でしかないの

そしてその幻が消えていく時

私の心に そっと灰を残していく

 

銀色の時計

苦しみと共に時間は止まり

奇妙な姿をした人達が通り過ぎて行く

その果てしない行列の中に 

かつて私のものだったあなたの唇が見え隠れし

忘却の彼方へと消えていく

そして私は一人、ただ後悔に浸るだけ

 

 

 

 

Tristeza de la Calle Corrientes (コリエンテス通りの悲しみ)  

 詩:Homero Expósito (オメロ・エクスポシト)

 

 

パンを買うわずかな小銭を稼ぐための通り

そしてその苦しむ町を流れていく川

その通りの光はなんて物悲しいのだろう

交差点に咲く、夢のようなネオンサイン

楽しそうに笑いころげるポスター

 

お酒なしでは笑うこともできず

もれてくるのは愛を売るための歌うような泣き声

悲しい喜びの市場

愛のしぐさが並べられ 

夢(イリュージョン)と共に売買される

 

ああ、我々(ポルテーニョ*1)であるがゆえの悲しみ!

ああ、夢をみるがゆえの悲しみ!

お前の喜びは悲しみであると同時に

待つことの苦しみでもある

青白い光に濡れながら

泣いてばかり

ああ、我々であるがゆえの悲しみ!

ああ、我々が背負う十字架ゆえの悲しみ!

 

パンを買うわずかな小銭を稼ぐための通り

そしてその苦しむ町をながれていく川

人々はキリストを売ったようにお前を売った

 

オベリスク*2 が鋭い剣のごとく刺さり

とめどもなく流れるお前の血で染まっていく

 

 

*1: ポルテーニョ=ブエノスアイレス生まれ育ちの人

*2: ブエノスアイレス7月9日通りにある、この街を象徴する白い塔

 

 

 

 

Trenzas (三つ編みのお下げ髪)

 詩:Homero Exposito (オメロ・エクスポシト)

 

 

三つ編みの髪

絹のように滑らかな 君の三つ編み

君の肌 そして君の不在を照らし出す月

僕を君への愛に縛り付けた あの三つ編み

君の微笑みと優しい声が 僕を虜にする

苦いマテ茶と同じ色の三つ編みは

僕の灰色の憂鬱を やわらげてくれた

 

野に咲く花のような君の愛は

どこへ行ってしまったのか

おそらく僕は 君を失う運命だったのだろう

君を探す度に 僕の孤独は深くなっていく

君の人生に編みこまれてしまった僕

君がいないという 不安の三つ編みに

愛しあったのに どうして別れなければならないのか

 

三つ編みの髪

絹のように滑らかな 君の三つ編み

君の肌 そして君の不在を照らし出す月

三つ編みの髪

その固い結び目

君は無言のさよならで 僕をしばりつけた

 

 

 

 

 

Tú  (あなた)

 詩:Jose María Contursi(ホセ・マリア・コントゥルシ)

 

 

輝く光のように

私の前に現れたあなた

あの頃の私ときたら 愛もとどまる所も知らず

世の中を生きていた

私の情熱は、過去の廃墟の中に埋もれてしまっていた

 

あなたの瞳、唇、そして声に

明るい未来が約束されると感じた

私とあなたの手が触れ合った瞬間に

また新たに心がはずんだ

 

あなた…

あなたの愛の魔法と善良さが

私に微笑むことと許すことを教えてくれた

ね、 私ったら恨みの塊だった

そして そう

海にかかる霧が日がさすと共に

晴れ渡っていくように

全てのわだかまりが消えていった

 

あなたは

奇跡のような美しい音楽

私に微笑むことと許すことを教えてくれたのは

あなた…

 

あなたなしに過ごした日々の なんと悲しかったことか

絶え間ない拷問の中で 死ねずに息が詰まっていた

悲しみと嫌気と昔の思い出に 疲れ果てていた

でも あなたの口づけ、優しさ、思いやりと信じる力が

奇跡のように 私の過去を消し去ってくれた

あの遠く暗い過去は もう二度と、

そう、二度とは戻らないでしょう